ハーダンガー民族博物館
ウトネは小さな村です。ホテルの前には船着場があり対岸とを結ぶフェリーが1時間に1本ほど着き、それに合わせて車やバスが並ぶ他は人通りもほとんどありません。村の周りはサクンボやリンゴの果樹園で丁度収穫の時期でした。ホテルをでて右にフィヨルド左に民家やさくらんぼ畑を見ながら10分ほど歩き坂を登った所にハーダンガー民族博物館がありました。

ハーダンガー民族博物館
フィヨルドと村を見下ろす立派な博物館です。アポイントの時間には少し早かったのですが学芸員の方に暖かく迎えられました。我々以外には参観者はおらず貸し切り状態の贅沢な見学でした。
学芸員の方のご案内で2階の展示室にあがりました。広い展示室の左側にはハーダンガー刺繍を施された色とりどりの民族衣装衣装が並び、右側には白い布のハーダンガー刺繍が並んでいます。日本で勉強していた時には白い布に刺す刺繍としてしか認識していなかったですが、民族衣装を飾る華やかな刺繍があることを学びました。古い写真を見るとハーダンガー地区は辺境の地であり、生活も貧しかったことが分かります。そうした厳しい生活の中でも結婚式などのハレの日には美しく着飾ったのです。
そのために女性たちは丹精込めて刺繍を施したのです。そうした衣装を揃える必要がある場合は親戚や知人に声をかけて分業で始めたそうです。何しろ細かい刺繍をするために時間が必要です。現在でも特別な日の為にこれらの民族衣装を着るそうです。だれが制作しているのでしょうか?今は親族で制作をするのではなくどこかにオーダーするという答えでした。どこという具体的な答えではありませんでした。ハーダンガー刺繍をするグループや集まりがあるようでしたらお会いしたい旨のお願いを事前に申し入れておいたのですがかないませんでした。もう携わる女性がいない様です。でも希望のある答えを聞くことが出来ました。ハーダンガー刺繍が他の国に渡り人気のある手芸となっています。それを知りこの地域の若い女性の間にハーダンガー刺繍がリバイバルとなり少しずつ少しずつ習い始めているとのことでした。
写真をクリックすると拡大します

デザインと手法の異なる様々な模様の展示作品 民族衣装の胸あての部分となります。

民族衣装のトップの部分のデザインの変化を知る事が出来ます。

正装です。ヘッドドレスを着けて 両手はハンドカーフで覆っています。

結婚式の様子です。結婚が決まると花嫁さんは自分のハンドカーフと男性の為に胸元に飾る
ハンカチーフをハーダンガー刺繍(一般的に知られているハーダンガー刺繍)を刺して準備をします。男性は花嫁の為に生活に使う木彫りの道具を制作して贈るそうです。

わたしの右側の方が学芸員さんです。英語で丁寧に説明をして下さいました。青い民族衣装はEU統合を記念して新しい試みがされています。スカートの下の所に星が円状にアップリケされていて履物はスニーカーです。

左側が女の子のフォーマル ドレス真ん中が未婚の女性のフォーマル ドレス 右側が既婚女性のフォーマル ドレスです。白いヘッドドレスを着けています。

皆で正装してお出掛けです。フォーマルなドレス アップは特別な日の為。結婚式 洗礼 etc., 老婦人が純白のヘッドドレスを着けています。現在ハーダンガー地域でヘッドドレスの作り方を知っているのは85歳の方お一人だそうです。先ず糊を作ります。ライスという単語が聞き取れました。それをねって水を加えて適当な濃度にするそうです。白い布にスターチ(糊)を着けてモールドにセットしてアイロンをかけるそうです。モールドは洋裁で使用するプリーツメーカーのようなものらしくひだを作るためのツール(道具)とのことでした。板に溝を作って布を凸凹に沿わせていく方法。アイロンはアガの民族博物館で実物を見る事が出来ました。結婚が決まると男性は木製の(日本の壁を塗るためのコテを大きくした様な形)アイロンをつくって美しい彫りのデザインで装飾をして妻となる女性に贈ったそうです。

美しいハーダンガー地域の民族衣装です。フィヨルドの両岸は100〜200〜300メートルoverの岩壁がそびえ立ち幾筋もの滝が流れ落ちている所。少しの土地を見つけては作物を育て、家畜を育てながら手仕事に心を注いで見事な衣装を完成させていた女性。晴れの日の為に懸命に作業をしたのでしょう。

花嫁の結婚衣装のヘッドドレスは手の込んだ金属とビーズをふんだんに使用した特別な物です。

寒い地域ですのでウールのソックスや手袋は必要品です

衣装を止めたり飾るためのボタンやコーディネートする留め具

胸あてをセットしたトップ。ブラウスの襟とカフスにはとても細かいピッチでハーダンガー刺繍が施されています。

ヘアーバンドとしてや長い髪に編み込んで使います。学芸員さんはリボンという表現をしました。

デイスプレイされているブラウスの拡大写真を見るといかに細かいピッチのステッチかがよくわかります。

エプロンのためではなく他の用途の作品を制作される様になりました
古い写真(写真をクリックすると拡大します)
これらの水彩画や写真を見ることで当時のリアルな日常の様子を教えてもらえます。
屋外は古民家園になっています(写真をクリックすると拡大します)